あるマルチチュードの書架
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それでもボクはやってない 2007日 周防正行監督


 名古屋高裁でイラク空自違憲の判決が出た。判決を出した裁判官はたぶん「左遷」だろう。それでも違憲判決を出せたのは、裁判官の信念と、そのような判決を出さざるを得なかった政府のあまりに曖昧な対応。その要因は露骨なアメリカ追随にある。国際的には「支援」が「Operation(作戦)」であるのは、明らかであり(海外の報道を見て見よ。「支援」などと書いているのは日本のマスコミだけだ。)、アメリカが軍事行動(つまり戦争)をしている国に行って「非戦闘地域だ」などというのは国民を馬鹿にしている。
 日本は三権分立といっているが、実際は立法府が全てを握っている。国会が内閣を選び、内閣が最高裁判所の裁判官を任命する。したがって、行政(検事)に逆らうのは、自分の上司に逆らっているようなモノである。したがって、検事側が負ける判決は出にくい。それは自分を雇っている国に対する反抗だ(本来、裁判官を雇っているのは国民のはずなのだが)。
 この映画は、日本における刑事裁判の実態をある意味で浮き彫りにしている。容疑者に対する偏った態度、決めつけ捜査。そして、裁判所の判決の出方。もちろん、この映画を見る側は、容疑者が無罪であることを前提に見ている。それが、映画を見る人の中立性をじゃましていることは否めない。しかし、それを差し引いても日本の裁判制度を考える上での問題作であることは間違いない。

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プラネット・テラー in グラインドハウス 2007米 ロバート・ロドリゲス監督

 B級映画っぽく作っているが(というか、まさしくB級映画)、パロディーとしてみれば一流。それにしても、人間(ゾンビ)がどんどんぐちゃぐちゃになるのは、あまり気持ちがいいものではない。しかし、それがなければパロディーが成立しない。足にこだわるのはいいが、両手は自由に使えるのだから、普段は手で銃を使ってもいいんじゃないかな(実際両手に機関銃を「持っている」シーンもある)。ここぞというときに足を使った方がおもしろいと思うのだが。

テーマ:映画 - ジャンル:映画



デリダ、脱構築を語る シドニー・セミナーの記録 ジャック・デリダ著 谷徹 他訳 2005岩波書店

 デリダ自身による脱構築入門ということで、私には珍しく新本を現金で買った。内容は、後期デリダの思想がコンパクトにまとめられているが、やはり前提としてある程度デリダの用語を知っていないとむずかしいかもしれない。
 しかし、「喪」や「赦し」の概念は、一見消極的に見えて、じつは壮大な新しい社会に向けての提言である。特に母語を含めた文化を「相続」している私たちは、過去の歴史の肯定的な部分だけでなく、否定的な部分も相続しているのだ(聞いているか、小林よしのり!)。そして、そこで必要なのは「赦し」の不可能性と不可能であるが故の可能性である。アメリカによる国家テロや、イラク人等によるテロは赦すことができないし、日本人として「長崎、広島」が赦せないのと、「南京大虐殺」が赦されないのと同じように、相続してるが故に、赦されない赦しを求め、赦せないことを赦す可能性がなければ、憎しみは憎しみを生むだけである。
 彼の表現はむずかしいが、自分の足下を常に「ずらし」続け、一定の立場に立つことを不可能にしながら、試作をする試練をあえて自分に与え続けた思想家の一定の成果を、私たちは人類の財産として不可能な未来に向けて「相続」する責任があるのだ。

テーマ:哲学/倫理学 - ジャンル:学問・文化・芸術



FROM HELL 2001米 アルバート・ヒューズ/アレン・ヒューズ監督


 「ジャック/ザ/リッパー」の話し。ジョニー・デップが麻薬中毒の警部を好演している。
 当時の娼婦は今と違って、プロだけでなく、労働者の妻がアルバイトでもしていた。その辺の時代検証がなされていれば、この事件が単なる連続殺人として恐れられただけでなく、その残忍さで恐れられただけでもなく、自分たちが被害者になり得るということがロンドン中を恐怖に陥れた要因だということがわかるだろう。そうすれば、警部がアヘン中毒だというだけでなく、もっと別な、人間の内部に触れる描き方ができたかもしれない。

テーマ:映画 - ジャンル:映画



時をかける少女 2006日 細田守監督


 期待しないで見たのだが、おもしろかった(ちょっと「タッチ」が入っているけど)。今時の女の子が描かれているのだが、女の子はいつの時代も不思議なモノだ。男には理解不能で、それが魅力なのだろうと思う。ただ、その一部がセクシャリティやジェンダーの問題に解消されてしまう事もあるだろう。それでも、その神秘性は残ってもらいたいというのは、男の願望にすぎないのか。



テーマ:映画 - ジャンル:映画